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2010.04.07

博士生活振り返り

ずっとドタバタしていたのですが、ようやく新しい生活のリズムがでてきました。

無事、情報理工学の博士号を取得して卒業し、4月からPreferred Infrastructureでフルタイムで働いています。
研究方面からのお誘いもいろいろあったのですが、会社一本に専念しております。
ただ、研究活動はこれからも会社のバックアップのもとしていきます。

また、3月に結婚もしました。

年明けから博士卒業、結婚の二本柱に加えてNLPチュートリアル、会社の仕事とテンパってました。
なんとか体を壊さず乗り越えられたのはみなさんの助けです。

しかし、喉元過ぎると熱さ忘れるという言葉通り、「これはもうだめだろう」と追い詰められていた時の気持ちを既に忘れつつあります。

誰かの参考になるかもしれませんので、この時の気持ちも含め博士3年過ごして感じたことや、研究の話とかを思い出せる範囲で書いてみます。

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私が修士に進学した頃は、就職もしくは起業を考えていて、博士への進学は殆ど考えていませんでした。博士に進もうと思い始めたのは研究に打ち込んでいき、様々な論文を読み、各学会で他の人と話をすればするほど、世界との差を感じ、もっと成長しなければと思ったからです。

この思いが決定的になったのは修士2年時のGoogleへのインターンでした(この時点では博士進学は決めていたが)。ここでは非常に優秀な人達と仕事をできたのですが、彼らの知識と経験の奥深さと幅広さには日々驚かされました。完全に理論の人だと思っていたらシステムのコードもバリバリ書けたり、その逆もいる。

基本的に、自分が想像できる範囲でしか、その人は成長することはできないと思っています。逆に目標となる自分を明確にイメージできれば、そうなることもできるのでしょう。このインターンでは、そうした人達をみることができ、そうした人に近づけるよう、まずは基礎固めをしなければと思い、会社をやりながら博士に進む道を選びました。

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博士課程(とポスドク)は人生において、自由に研究テーマを決められて、じっくり勉強できる最後のチャンスだと考えてました。
プロジェクトチームに入ったり、会社に入ってからや、予算をとってからだと、なかなかそうはいかないからと思ってるからです。また、研究社会に自分を売り出す重要な時期だとも考えてました。

そうしたことをふまえて、私は博士で過ごしてた間は次のことを考えながら過ごしました。

(1) 基礎の勉強をする
(2) 研究を可能な限り自由に進める(やりたい)
(3) できるだけ多くのテーマ、分野に触れる
(4) 社会に貢献しアピールする

(1) 博士の前半は研究活動はそこそこに、ひたすら本と論文とコードを読んでました。特に数学、統計などの基礎力を高めるのに努力しました。こうした自己投資活動に時間をたくさんとれるのは博士進学の大きなメリットでした。

(2) 研究のテーマ、進め方、問題の処理の仕方について可能な限り自由にやっていきました。全く違う分野へ応用してみたり、共同研究をしたりなどです。そのため、できるだけシガラミがないように立ち振る舞いました。

(3) できるだけ多くの分野の様々な課題を取り組むようにしました。実際取り組んでみないと分からないことが多いし、また、ただやってみたかったからです。論文になってないのが殆どですが、小さいのも含めて課題、手法だと延べ50ぐらいは試して作ったと思います。結果として一つの仕事に深く突っ込めなったのは残念だったかもしれませんが、今後これらの経験が生かされる日がくるのだと思ってます。

(4) 仕事をしたら、できるだけ早く論文、スライド、実装を公開するようにしました。また、本などの雑誌などに寄稿できる機会があれば積極的に書くようにしました。世の中に触れる人の量は「論文<<雑誌<<一般向けの雑誌<<実装」であることを常に心がけました。

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さて、精神面の話です。

一番難しかったのがモチベーションの維持でした。もし、3年間やる気を全開にし続けられたら、10倍ぐらいの成果がでていたでしょう。実際はやる気が全くでない時期、パソコンを開いても全く論文が書けず、実験ができない時期というのがよくありました。

また、欝とまではいかないですが、言い知れぬプレッシャーと戦ってました。自分がやらなくても誰も何も言わないし、何をいつまでどのようにやるか全部自分で決められる、というのは最初はいいなぁと思ってましたが、途中からこれは何と厳しいことかと思いました。人の心は弱いので、こうした状況では何もしない楽な方向にまずいきます。そして研究が進まないことに不安になります。

これとはちょっと違う不安もありました。
以前、研究者の人達との飲み会で、突然アイディアがぱたっと出なくなるのではないかという不安が常にあるというという話がありました。研究者は、与えられたルーチンワークを日々やるわけではなく、どちらかというとクリエーターに似ているのだと思います。毎週締め切りがあり、何もないところからイメージを膨らませて作品を作っていく漫画家とかは本当に偉いと思います。頑張ってもどうにもならないかもしれないというのがありました。

モチベーションを上げ、不安を解消するためにいろいろ試行錯誤しました。

他の分野や外の人との共同研究というのはモチベーションをあげるのに良い手段でした。また、ワークショップや研究会などに出て刺激をうけたのも多々あります。私は何度も刺激的な研究・論文・人に出会い、やる気が0からMAXになったことがあります。

それでも、どうしてもダメなときがあります。こんなとき、よく効いたのは、「全く研究やらない」メソッドです。1ヶ月から2ヶ月ぐらい、やらない。こんなに離れて大丈夫かなと心配になってきてもやらない。そうすると研究がしたいという気持ちが自然とどんどん湧いてきます。抜本的な気分転換は私には非常に大切でした。

また、「目標を自分の能力にあわせて諦める・下げる」というのが大切だということを学びました。ネガティブなようにみえますが、とても重要なことだと思います。
ある目標を達成しようとして、達成できない⇒自分は駄目だ、といく前に、諦めるか目標を修正するようにしました。
自分が達成できるよりもはるかに高く目標を置いて無理をして生きていくのは、とても辛いことです。夢はもつべきだと思いますが、実際に行動に移すための目標は適切に設定されるべきだとつくづく思いました。

あとは、きついタスクは可能な限り小分けにするとやる気を出すのに効果的だとわかりました。大体1~3時間ぐらいの粒度までタスクを分解するとやる気がでてきます。前、本で読みましたが、人はやり始めるとやる気がでるそうです(面倒なことですが)。自分に簡単だなと思わせてやりはじめるのがよいのでしょう。

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一番厳しい時期は博士論文書きでした。特に11, 12, 1月は論文と結婚と仕事で肉体的、精神的にいっぱいで、「これはもうだめだろう」とか、「今年の冬はこえられそうにない」とか毎日いってました。「これ終わったら結婚するんだ」というフラグが立っているという冗談をtwitterに書いて、本当になったらどうしようと思うほど追い詰められてました。

修士論文を書き終えた瞬間に、博士論文を書くのは苦労するんだろうなぁと思ってましたが、その想像を遥かに超えてました。夜に何度も締め切りに間に合わない、論文が受理されないという夢を見て起きました。

それでも何とか終えることができました。審査が終わったときは本当に嬉しかったです。そのあとしばらくはニヤニヤしてました。客観的に考えるとなぜそんなに大変だったのかと思えるのですが、それでも当事者の日々の精神状態は大変でした。

早めにストーリーをまとめ、書き始め、見てもらうのがやっぱり大切だと思います。
私は言われてましたができませんでした。

あとは今まで自分がやってきたことを振り返り、自信を持ち、耐える

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さて、博士に進んでどうだったかです。

研究の基礎体力(知識・論文読み・書き・実装)は修士の頃と比べたらケタ違いに上がりました。例えば、あの修士入学当時もプログラミングはよくやってる方でしたが、今、その当時の実装を見ると相当やばいと思えるぐらいに成長しました(会社で学んだ事も多いが)。論文読み・書きも相当速くなったと思います。

あと、研究を個人でやっていくだけのスキルもまだまだ未熟ですが最低限はついたと思います。

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会社と博士の二本立ての3年間、
たくさんの人にお世話になりました。ありがとうございました。

これからもよろしくお願いします。

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